「SSには軍人や警官、消防士もいる。被告も正義感から…」情状求める弁護人(産経新聞)

【法廷ライブ SS元船長求刑】(3)

 《シー・シェパード(SS)抗議船「アディ・ギル号」の元船長、ピーター・ジェームス・ベスーン被告(45)に対する論告求刑公判で、検察側がベスーン被告に懲役2年を求刑したのに対し、弁護側が最終弁論で反論を繰り広げている。南極海上の調査捕鯨妨害でベスーン被告が酪酸(らくさん)入りの瓶を日本船に撃ち込んだ行為は「傷害罪に当たらない」と強調する弁護人。ベスーン被告は落ち着かない様子で、同時通訳される弁論の内容に聞き入っている》

 弁護人「○○さん(酪酸で負傷した日本船乗組員の実名)は、被告がランチャーを構えたのを見て『危ないと思いました』などと証言しています。しかし、○○さんの証言では、○○さんは身をかがめたり、ランチャーを凝視して動向を注視したりはせず、漫然とブリッジの方を見上げて立っていたことになり、危険に遭遇したと感じる者として、極めて不自然な行動と言わざるを得ません…」

 《○○さんの行動などに疑問を呈する弁護人。酪酸がかかったとされるかっぱやヘルメットを破棄したという、日本の捕鯨船団の対応にも、不信の目を向ける》

 弁護人「酪酸が付着したかっぱの存在は、SSによる酪酸の撃ち込みを立証する極めて重要な証拠であるにもかかわらず、漫然と廃棄したことは極めて不自然・不合理な行動です」

 「○○さんは、ヘルメットを『念入りに洗った』などと証言していますが、酪酸で傷害を負ったと主張するのに、証拠保全が全くなされていないのも、不自然極まりないといえます」

 《さらに弁護人は、けがの程度について、「○○さんは、あいまいな証言に終始している」と主張。○○さんが診断を受けたのが、けがをしてから2日後であることなどについても、「船医の診断結果にも疑いが残る」という主張を繰り広げた》

 弁護人「被告は第2昭南丸(酪酸を撃ち込まれた日本の妨害監視船)の乗組員に本件ガラス瓶が直撃したり、破片が当たったりしないように、あらかじめ人のいない個所を狙っています。狙いがはずれる可能性も否定できませんが、被告は事前に着弾性能の実験をして、誤差が生じないよう準備していました…」

 「被告がSSの活動に参加したのは平成21年7月ごろで、被告はそれ以前のSSの活動内容や日本の調査捕鯨船の被害状況などに関する知識を有していませんでした。被告の酪酸に関する知識は、『人体に害を与えるものでなく、成分はオーガニックで、酸性度はオレンジジュースと同程度』というものでした」

 《「傷害罪が成立しない」とする主張を一通り終えた弁護人は、一息ついて「情状について」と述べ、言葉を続けた》

 弁護人「SSのメンバーには、軍人や警察官、消防士もいます。被告は純粋な正義感から活動に参加したものであり、また、生命や身体を害することを目的としたことはなく、『人を傷つける可能性があれば、発射しなかった』と述べています」

 《ここで弁護人は、ベスーン被告が第2昭南丸に侵入した動機について、説明を始める。公判で、ベスーン被告は動機について、自分のアディ・ギル号が第2昭南丸と衝突し、沈没した事故を挙げ、『第2昭南丸の船長に責任を問うため』と主張している》

 弁護人「(衝突・沈没事故の)原因については、双方に言い分があろうと思いますが…」

 《弁護人は、関係者の証言から、アディ・ギル号は衝突時に「ほぼ停泊状態だった」としたうえで、こう続けた》

 「…衝突原因は、本船(第2昭南丸)が無用にアディ・ギル号に接近したことに起因するもの『とも』評価できるものです」

 《弁護人は、あたかも第2昭南丸に事故の原因があるかのような言い方をしつつも、「とも」の部分を強調し、断定を避けた》

 弁護人「アディ・ギル号は、被告が3年をかけて自ら開発し、約3億円をかけて完成させた、被告にとっては『人生そのもの』という愛船で、それが一瞬で海の藻くずとなり沈んでしまったものです。この衝突の責任問題について相手方に会い、直接に話がしたいという動機自体は、十分に理解し得るものであります…」

 《さらに弁護人は、ベスーン被告の「反省」について、主張を始めた》

 弁護人「被告は正義感を持って、SSの活動に参加したが、今後、他人を傷つけるような可能性のある活動には参加しないと表明しています。この表明は、刑事事件に発展した自らの行為について、真摯(しんし)に反省していると評価できます」

 《弁護人は、ベスーン被告がSSから「除名」されたことで、これ以上、同じことは繰り返すことはできなくなったことも強調する》

 弁護人「本件事件の基礎となった活動への参加に、被告を誘因する外部的環境も、存在しなくなりました」

 《弁護人は、ベスーン被告が「普通の市民」であることも強調する》

 弁護人「被告はエンジニアリングなどの学士号を有しており、石油開発会社への勤務経験もあるインテリです。母国には妻と2人の子供もおり、ごく普通の家庭生活を営んできました。今後、母国で平穏に暮らしていくつもりです」

 《ベスーン被告はこれまでの公判で、著書を執筆中であることを明らかにしており、「帰国後は、執筆を続けたい」と話している》

 弁護人「以上の通り、本件公訴事実のうち、傷害罪についてはその成立に合理的疑いを差し挟む余地があると考えますが、その余の公訴事実についてはすべて認めており、かつ被告には十分な反省がみられ、再犯の恐れもないといえます。今回に限り、母国での再起の機会を与えてもらうことが、更生の観点からも相当であり、執行猶予付きの判決を求めるものであります」

 《弁護人が、最終弁論書の読み上げを終えた。続いて、ベスーン被告の最終陳述だ。多和田隆史裁判長が「では被告は発言台(証言台)のところに座ってください」と声をかけた》

 《ベスーン被告は少しとまどった様子で、英語で問いかける。女性通訳が「立ってもいいですか?」と翻訳すると、多和田裁判長は「立っても座っても、どっちでもいいです」と答えた。ベスーン被告は証言台の前に立ち、紙を広げた》

 =(4)へ続く

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